2023年5月12日

レティーロ チェア張替え H様邸

レティーロ チェアをご愛用いただいているH様。座面がへたり、背もたれの籐も破れてきたので修理したいとご相談をいただきました。また今回を機に、背もたれを籐張りから布張りに変えたいというご要望もいただきました。

以前にも籐張りから布張りへの変更についてご紹介しましたが、今回は背もたれの構造を中心にご紹介いたします。

背を布張りに変更するにあたり、H様から「(籐とただ置き換えて)生地にするだけだと背もたれに寄り掛かった時、生地が抜けてしまわないだろうか」とご心配をいただきました。

昔の椅子では背に籐張りを採用していることも多く、修理の際、今回のように布張りへ変更を希望されるお客様も多いのですが、実は籐張りと布張りとではかなり構造が異なります。

籐の場合、背もたれは一層構造ですが、布張りになると五層構造になります。

椅子前側から、
籐の場合 1:籐
布の場合 1:生地 2:ウレタン20mm 3:板材 4:ウレタン5mm 5:生地
となります。

そのため籐張りから生地張りに変更する場合は、新たに土台からつくります。

まず1~5の各部材を準備します。

2番と4番はどちらもウレタンになりますが、それぞれ厚みが異なります。2番の方がお客様により接するため、背当たりを考えて少し厚めのウレタンを使用しています。
1番の前側の生地、3番の板材、5番の後ろ側の生地は型紙に合わせてそれぞれ裁断します。

次に3~5番の部材それぞれに接着剤を散布し、丁寧に張り合わせていきます。
5番の後ろ側の生地は板材よりも若干大きめにカットされているので、はみ出した生地はカッターで切り落とします。

ここで一度、椅子のフレームに取り付けます。
※取り付けた後ろ側からの写真は参考画像です。今回修理させていただいた家具とは別の家具・張地になります。

そして最後に前側から2番のウレタンと1番の生地を張り込み、仕上げます。

座面も綺麗になりました。張地はもちろんウレタンも新しく入れ替え、座り心地が蘇っています。

今回の修理内容は以下の通りです。
背もたれ:籐張り → 布張り(合成皮革)
座面:ウレタン入れ替え
   生地張替え(合成皮革)
   ※元々のデザインにあったボタンは撤去(ボタンのところにホコリがたまりやすいため)

背もたれを籐から生地に張替えることで家具の印象が大きく変わりました。
また見た目だけではなく、合成皮革にされたり、ホコリがたまると気になっていたボタンを撤去することで、メンテナンス性も向上したと思います。

家具を長く使うためには「丈夫な生地を使う」ことも重要な要素の一つですが、生地の丈夫さだけではなく、日々のお手入れもとても大切です。そのため、このようなご修理の際にメンテナンス性も考慮した修理内容にしていただくことも、より家具を長くご愛用いただくことに繋がります。

修理をご検討される際には、ご利用環境やそれに伴うお手入れなどについてもぜひお気軽にお聞かせください。専任担当者がご状況や家具の状態に合わせて最適な修理内容をご提案させていただきます。

【背もたれの構造を変更いただく際の注意点について】
今回のご修理とは逆に、布張りから籐張りに変更することは、構造上、承ることができません。詳細につきましては下記記事の「④背の布張りから籐張りへの変更について」をご覧ください。
椅子の張替:背の籐張りから布張りへ(S様邸) - マルニ木工 公式サイト - Maruni

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