2022年10月14日

世代を超えて受け継いでいただくために H様邸

「世代を超えて受け継がれるモノ」よく聞くフレーズですが、家具においては親子で好みが異なったり、それぞれの時代で流行のインテリアがあったりと、そのままの状態で受け継ぐことはなかなか難しいと思います。しかし、家具は「生地」と「木部の塗色」を変えるだけで印象がガラリと変わります。
そのままでは使えないけれど、少し手を加えることでお客様お一人お一人のライフスタイルにあった家具に生まれ変わらせることができます。
今回はそれらを実感することができたご依頼をご紹介いたします。

お客様からは「元々両親が経営していた病院で使用していた椅子を、自宅でも使いたい。ただ赤だと少し印象が強すぎるので、イメージを変えたい」というご依頼でした。
その際に「生地だけでなく木部の塗装を剥がし、木の色そのままにしたい」というご要望もいただきました。

木部修理

以前も何度か同じようなご依頼をいただいたことがありますが、今回のご依頼の一番難しい点は、赤い塗装を剥がしてみないと元の木の色がどのような状態かわからないことでした。場合によっては、同じ椅子でも一脚ずつ木部の色が大きく異なる可能性があります。
理由は主に2つあります。1つは、一度目の塗料が木の個性でもある木目、特に導管に染み込んでおり、その染みこみ具合の違いです。もう1つは、同じ木材でも塗装の剥がれ具合に違いが生じることです。
事前にお客様にそのことをお伝えしたところ「それぞれ色が違うのは個性的で面白いですね」とおっしゃっていただき、修理をスタートすることができました。

元々の塗装が濃い色でしたのでどこまで色が落ちるか不安でしたが、思ったより塗装がうまく剥がれて綺麗な色になりました。

他のパーツでは、このように色がよく落ちたところ、落ちなかったところの差が生じている箇所もありました。

張替え修理

もう一つ特徴的な修理は背もたれの張替えです。この背もたれのデザインを表現するため、1枚の生地ではなく何枚もの生地を張り合わせてこのようなデザインにしています。

通常の背もたれでは1枚の型紙を使うことが多いですが、今回は5枚の型紙を使用します。

型紙を生地にあて、パーツを裁断していきます。

裁断した生地を縫い合わせていきます。

成型したウレタンに縫製した生地を合わせます。

ボタンを共布でつくり、生地に取りつけていきます。

縫い合わせた生地を背もたれ本体に張り込んでいきます。

レトロな印象だった家具がシンプルでモダンな家具へと生まれ変わりました。
どんな家具になるか完成しないとわからない中、「それでもやってみよう」とおっしゃってくださったお客様のおかげで、この家具は世代を超えて受け継いでいただくことができました。

世代を超えて受け継がれるためには、私たちはもっとアイデアやノウハウのレパートリーを増やさなければなりません。
「マルニ木工に相談したら、おばあちゃんからもらった家具をめちゃくちゃカッコよくしてくれた」そのようなことを言っていただけるような修理部門になっていければと考えています。

私たちのご提案の一端を下記サイトからもご覧いただけます。
マルニファニシング 公式オンラインストア | リノベーション家具

【木部塗装修理 ご依頼時の注意点について】

今回のような木部塗装をご依頼いただく場合、いくつか注意いただきたい点がございます。

  • 関東の修理工場でのみ承りが可能です。
  • 塗料が木の奥まで染み込んでいると、木部を研磨しても色が落ちない可能性があります。

※今回のような濃い色からナチュラルな白木っぽい色にする修理をご希望される方は、イメージ通りの仕上がりにならないことがあります。

【伊勢丹新宿店 期間限定 特別相談窓口のご案内】

2022年10月12日(水)より伊勢丹新宿店 5Fで開催される「RE-INNOVATION ― 家具再生の新しいかたち ―」内にて、修理やリノベーションの相談窓口「FOR GOOD COUNTER」を特別に設置します。イベントと合わせて窓口にもお気軽にお越しください。

伊勢丹新宿店にて「RE-INNOVATION -家具再生の新しいかたち-」を開催 10月12日(水)~18日(火)


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